FEif感想(主にカムイ考察)

FEHで一番最初にゼロが来て「なんだコイツ!?」となったこともあり、興味が出てFEifを買いました。出てから二年も経ってるし、ゲーム下手くそな私でも攻略サイトとか見ながらならいけるだろうと思って……。
買う前からあまりにも悪評が立っており逆に気になってて、それも購入理由の一つだったのですが、いや~本当に噂に違わず酷いシナリオだった。もはや感心するレベルです。
カミラ姉さんかシャラちゃんと結婚したくて始めたので最初はマイユニにめちゃくちゃ感情移入してまして、色んなキャラクターからちやほやされるのも開始当初は「おっいいやんけ^^」などと思ってたんですが、支援集めたりストーリー追っていって、一周目を終えたあとには不快感しか残りませんでした。その後、色々自分なりに考えて納得しようとした結果、考えが溜まったので吐き出すためにここに書いてます。


※以下の文章はカムイ贔屓の人間が書いた「カムイの扱いが酷い!」という趣旨のものなので、読後は吐き気、頭痛、目眩などに襲われるおそれがあります。ヘイト・アンチ発言はないように書きましたが十分ご注意ください※



一つ言いたいんですけど、シナリオの出来が悪いのを仕方ないこととして受け止めたときにね、一番この作品で悲惨なことになってるのってカムイなんですよ。
いや、もちろん意味もなく死ぬリリスみたいなキャラの方がかわいそうなんですけど、カムイはかわいそうなわけじゃなくて「悲惨」なんです。「どうしようもない」とかと言い換えた方がいいかもしれない。本当に悲惨すぎる。
まず主人公としてはあり得ないほど精神的に成長しないし、成長しないでも許されるほど完成された人格でもないし、そのわりにはギャグ時空でもなく(一応)戦記物に登場してるだけあって酷い目には遭うから完全に幸せになることもないというどうしようもなさ。
おおまかな話の筋だけで三ルートもあって支援の組み方もキャラの人数分あるのにカムイが幸せになる未来が見えないのどうなってるんですかね。仮にも主人公ですよ? 意味が分かりません。このどうしようもなさには目を見張るものがあります。

まず外的要因ですけど、よく叩かれる対象になってるカムイちやほや展開、これがカムイを主人公にするうえで最悪だったと思います。暗夜兄弟や執事がただカムイを慕ってるならいいんですよ。でも違う。
カミラ姉さんは歪な家庭環境で育った代償行為としてカムイを可愛がっている、という話がゼロとの支援会話で出てましたね(たまにあれはゼロの勘違いだったという人がいますが、ゼロが謝ったのはカミラに対して内面の弱さを指摘したことであって、指摘の内容自体はカミラも肯定してます)
ジョーカー支援なんかはもっと顕著で、幼い頃家族に捨てられたも同然の彼は「カムイ様のお世話を出来なくなったら私の存在意義がなくなる」とカムイの成長を阻んでいる。
要するに彼らは“カムイ”が好きというか、自分が愛情を与えても許される人物を自分の存在意義ということにして、その役に立つことでアイデンティティーを保とうとしているんだと思うんですよ。アニマルセラピーに近い。これはカムイ好き好きキャラの大半に言えることです。
悲惨な環境で育ったことを考えれば無理もないですし、特に親の愛が得られないまま育った暗夜兄弟にとって唯一妾争いに関係のなかったカムイが癒しになるのは分かります。分かるんですが、カムイって主人公なんですよ。主人公にするならもうちょっとこう…………そんなみんなに依存されてるとかいう扱いにする必要ありましたか? もっとみんなに自立を促していくようなキャラでも良かったんじゃないですか?
そしてさらに最悪なのが、カムイの性格がアニマルセラピー用のペットをやるのに異常に向いてるということです。フェリシア支援で判明するフェリシアの存在意義=他の人のお世話をすること、というのを叶えるために、フェリシアが驚異的なドジにも関わらずカムイは彼女をメイドとして使い続けています。普通だったらより適性のある軍人の方をやれって言うと思うんですが、言わないんですよ。皿割られようが熱々のスープかけられようが許してしまう。自分が害を被ろうが相手のしたいことを尊重しちゃうわけです。加えて、押しが弱く自責しがちな性格も手伝って、相手がどんなに自分に依存してるのをおかしいと思ってても「僕が間違ってたのかも……君は僕のためにやってくれてるのに……」とか言い始める。そりゃ寂しい環境で育った人がただ甘やかすのには最適の人間ですよ。
そんなこんなで、誰もカムイを成長させようとしない。してもらったら甘やかせなくなって困りますからね。

次にカムイが悲惨なことになってる内的要因としては、前述のとおり「成長しない」ことです。加えて、頭が悪いのに性格と運がそこそこ良くて、病まない程度にメンタルが強い。せめてもう少し頭が良ければアクアの無茶な策をたしなめられただろうし、性格が悪ければ人を殺すことで悩まなくて済んだろうし、運が悪ければもっと早く死ねただろうし、メンタルが弱ければ精神を病んで戦場から立ち退くことも許されたでしょう。
でもどれも満たしていないからアクアのラジコンとして苦しみながらも人を大量に殺すはめになるわけです。こんな酷い扱いされてる主人公見たことない。暗夜アクア支援で白夜兵に恨まれる悪夢見て魘されてるの、C~Aで一見解決されてるふうに見えますけどあれ別に何も解決されてないですからね。これからもカムイは白夜を裏切った罪悪感で精神をすり減らしながら、アクアに発破かけてもらえれば何とか人殺しも頑張れるよって言ってるだけですからね。そこは自分でなんとか理由見つけて納得しろよと……。アクアいなくなったあとどうするんだよ……。

そして大切な人が沢山死んでるにも関わらず、なぜカムイが内面的に一切成長しないのか考えてみました。で、色々考えたなかで一番有力なのは「カムイは辛い出来事はみんな忘れていくのではないか」説です。人はあまりにも悲しい出来事が起こると防衛本能としてそれを忘却するそうですが、カムイは人一倍優しい性格をしている(という設定らしい)ので、誰か死ぬことによる悲しみの感情も人よりかなり強いのではないでしょうか? それで自分を守るために忘れてしまうようになってい
るとか。一応根拠としては幼い頃親友だったはずのサイラスを会えなくなった途端忘れていたこと、ギュンターが崖から落ちたあと何事もなかったかのようにころっと元気になっていること、拐われた時の記憶を忘れていたことなどです。サイラスと会えなくなった時も従者がみんなして忘れさせようとしていたらしいですし、カムイが成長することを喜んで促すキャラクターもいないので、「悲しいことは忘れる」という癖が染み付いているのではないでしょうか。
だから毎回毎回誰かが死ぬたびに悲しむし、それをすぐに忘れて成長もしないから、また何かが起こったときには同じだけ深い悲しみを味わうはめになる。まぁこれは私がなんとか納得したくて色々こじつけただけなんですが、あまりにも闇が深いのでただ単に忘れっぽい奴な方がまだマシな気もします。

あとカムイの性格ですごく気になったのが、ナイーブじゃないわりには自責しがちで、自分のことを幸せな部類の人間だと思ってることです。スズカゼ支援・サクラ支援・カザハナ支援など白夜キャラとの支援でよく見られますが、カムイが幼い頃に拉致されたことを「僕のせいでつらい思いをしたんだね」と謝り始めたときはひっくり返りそうになりました。なんでそこで謝るんだお前は。
白夜アクア支援でも監禁されてたくせに幸せだったと主張しはじめるあたり、わりとメンタル強い方というか、多分自分が何かされたり言われたりする分には特に何も感じない人なんでしょうね。裏切った国の兄弟に散々なじられても作中で泣いたりしないし、「どうせ処刑するなら早くしろ」と言ってたり、「マークス兄さんの手を煩わせるくらいなら自分で死ぬ」と言ってたり、甘ったれてるわけではないんだろうなぁと……。敵や味方を殺すのが自分が死ぬより嫌なんだろうな……。本当に戦記物の主人公に全然向いていないなぁ……。

そう思うと、ですよ。
カムイは自分よりも他人が傷付くほうを何倍も嫌う性格で、ずっと監禁されていた状態からいきなり外に放り出されて戦争に巻き込まれ、大切な人が死んだり自分が人を殺したり、白夜や暗夜では家族を裏切って殺した。のに、色んな人から依存されて甘やかされてることもあって一切成長せず、全編を通して人殺しに苦しんでいる。

なんでそんなキャラを、よりにもよって戦記物の主人公に据えたのか、私には分かりません。



最初に書いたとおり、私はプレイしている間ずっとカムイをマイユニ(自分の分身)だと思って進めていたので、ゲームをクリアしたあとあまりにも幸せになれる道がなくて呆然としました。

主人公どのみち天涯孤独じゃん。
暗夜白夜じゃどっちかの兄弟を殺したこと一生苦しむはめになるじゃん。
透魔の王なんか主人公の頭の悪さで務まるわけないじゃん。

カムイ≠自分だと思ったところでゲームクリア後もカムイの状況や精神の成長のなさが悲惨すぎて達成感がまるでない。
お目当てだったカミラ姉さんにしてもカムイとくっつけるのは関係の歪さが加速する気がしてやめました。カミラはタクミみたいに自己顕示欲が強いか、ゼロみたいなガチ不遇とか、どっちにしろ愛に飢えてるタイプとなら幸せになれるんじゃないかな。

最初はなんとかカムイを幸せにしてやりたくて色々考えてたんですけど、本人はどうも自分のことを幸せだと思ってるふうなのでもう諦めました。今はマムクートと人間のハーフは極端な長寿か短命のどちらかという話を聞いてしまい落ち込んでいます。

何故カムイをここまで悲惨なキャラにしたのかとか穴が多すぎるとか支援によってキャラがブレブレとか、シナリオは本当にアレでしたが……、好きなキャラもいっぱいいたし、まぁこういう苦い思い出も後からは笑い話になると信じてるので後悔はしてないです。

八木少将考察

狂四郎2030に登場するキャラクター、八木少将。最初に出てきた悪役にもかかわらず、すさまじい存在感を放っていたため印象に残った人も多いと思います。

 

2030年下の日本で来るべき第四次世界大戦のために遺伝子操作を受けて誕生し、完璧な人間として軍隊に圧倒的なカリスマを誇っているという設定ですが…

キャラクター造形は複雑そのもの。

 

まず、彼は善人なのか悪人なのか? これは少将のキャラクターを考えるうえで重要なことなのではないでしょうか。

彼はおそらく、「これがいいことか、悪いことか?」などと考えながら行動しては居ないと思います。強いて言うなら、自分のしたことは全部正しいと思っている。

八木少将は自分が最も素晴らしい人間だということを信じて疑っていなくて、だから多分、彼にとっては「人を助けること」も「人を殺すこと」も全部「自分のしたこと」であるという点において等しく正義なんです。

そして少将は大臣のような薄汚い、こすっズルい人間が嫌いです(赤堀に関しては、嫌いを通り越し、呆れて苦笑しているシーンも多々ありますが)

彼の中では、自分は常に慈愛と正義を重んじる、完璧なヒーローでなくてはありません。

八木少将が表情を引きつらせて『ひくひく』という効果音を出してるのは、決まって“素晴らしい自分という存在が肯定出来なくなったとき”です。
少将が最も軽蔑するのは『肉欲だけで女を抱く下劣な人間』や、『君(ユリカ)を幸せに』できない人間であって、自分がそうなりつつある!とユリカに突きつけられるたびに『ひくひく』と顔が痙攣する。

では、印象的な、ユリカをレイプ→犯罪者の中に放り投げて→犯罪者を皆殺し、という一連の流れのあと、なぜ少将は爽やかに笑っていたのか?

それは、少将の中ではレイプは“ユリカと自分が結ばれる”行為であり、犯罪者たちに投げ込んだユリカから「助けて!」と叫ばれることで“ユリカから必要とされ”“ユリカを助けた”、ヒーローのような自分のあるべき姿に戻ったから。
だからあんなに爽やかなのではないかなと思います。

そう考えると、ユリカが助けを求めないことで顔面が痙攣し、「早く『助けて』って言えよ…」と焦ったようにせがんだのも納得がいくような。
(ユリカを助けないと自分はただの悪者になるので)

“完璧な自分”に戻った少将は初期と同じにこやかな笑顔でユリカと接しますが、その完璧さは自分が一生懸命に取り繕ったものだから、笑顔も歪んでいる。

彼が自分の行為=正しいと思っているのは、あのマンガの背景的に仕方ないことのような気もします。わずか17歳で重い責任を背負わされ、『決して失敗なんかしないロボット』として扱われ、作戦がことごとく成功すればそう思っても仕方ないでしょう。

 

こうまで完璧さを求めた彼ですが、ところどころ弱い部分も残っていて、自分がどんどんヒーローから外れて化け物になっていくのを感じているのがまた切ないですね。

そういう身の内に矛盾を抱えて、のたうちまわりながら生きているのが人気の秘訣かもしれません。